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ニーナ・アナニアシヴィリ ――― 類まれな才能に恵まれた、華麗なるバレリーナ。彼女こそ、現代における最も輝かしいスターの一人と言えましょう。彼女の踊りは、クラシックの純粋性、豊かな音楽性、確かなインテリジェンス、美術彫刻のような重厚感、そして、甘く、つややかな叙情性に満ち溢れています。彼女の天才的な素晴らしさは、彼女の個性が唯一独特のものであり、他人には真似のできないところに生まれます。ロマンチックかつドラマチックなクラシック作品にとどまらず、現代の巨匠によるモダン作品においてもその実力をいかんなく発揮しています。回転、ジャンプ、バランス、アダージョにおける姿勢の安定性、またレガートフレーズにおいては心臓が止まるほどの長いステップ、そして目も眩むばかりのスピードを誇るステージ等、あらゆる要素を難なくこなすことは言うまでもありません。

ボリショイバレエ学校で学んだアナニアシヴィリは、絶頂期のロシアクラシックバレエ教育を縮図的に示す存在です。そして彼女は、間違いなく、マリーナ・セミョーノワ*、マイヤ・プリセツカヤ、ライサ・ストルチコーワ**、エカテリーナ・マクシーモワといった過去の偉大なボリショイバレリーナたちの後を引き継ぐ立場にあります。(アナニアシヴィリは、*セミョーノワ、**ストルチコーワの指導を受けている。)

アナニアシヴィリは、ホームカンパニーであるボリショイバレエ団のプリマバレリーナとして名声を博すのみならず、ロシアのバレリーナとしては初めて、ボリショイに所属を置きながらマリインスキーバレエ(旧キーロフバレエ)、ニューヨークシティバレエ、英国ロイヤルバレエ、デンマークロイヤルバレエ、アメリカンバレエシアター(ABT)等への客演を行うという新たな歴史を作りました。さらに、『アナニアシヴィリと世界のスター達』と題した独自の公演においても素晴らしい成功を収め、日本、ヨーロッパ、アメリカでチケットの記録的な売れ行きをあげました。

ロシアでのアナニアシヴィリのレパートリーは、『白鳥の湖』『ジゼル』『眠れる森の美女』『ドン・キホーテ』『バヤデルカ』『ライモンダ』『くるみ割り人形』『ロミオとジュリエット』といったクラシック作品を中心としています。このようなクラシック作品における彼女の踊りは、作家ゲンナジー・スマコフいわく「ジェスチャーとポーズの大振幅」で彩られ、ロシアの国民的気質と言われる情熱を表現します。

この特徴は、『白鳥の湖』第2幕に最もよく表れています。アナニアシヴィリの演じる、はかなく臆病なオデットはまるで羽の中に自分の身を隠そうとするかのように、頭と首を肩の上に折り重ねます。このポジションが、テーマ ポーズを極めて効果的に演出します。一方のオディールは180度異なります ―― オディールの登場シーンでは、地獄のかまどから噴き出す熱風のごとく姿を現し、妖しい魅力を充満させます。

『ドン・キホーテ』の主役キトリに関しては、アナニアシヴィリの演技はまさに誰もが見習うべきものと言えるでしょう。それは、明るさ、笑いのタイミング、息を飲む妙技、そしてクラシックの純粋性を生き生きと併せ持った名演です。同じく心を打たれるものとして『バヤデルカ』が挙げられます。ここでは、踊り子、巫女、恋敵、影の王国における精霊等、この役柄が持つ様々な側面を演じる中で、アナニアシヴィリはニキヤの内なる熱情、熱い恋心、そして許しを与える寛大さを具体的に表現して行き、美しさに溢れた典型的古典主義を追求します。

19世紀のクラシックスタイルを完璧なまでに身に付けていることに加えて、アナニアシヴィリはモダン作品に対する最高の順応性と感性にも恵まれています。これによって、20世紀の作品をみごとに表現することに成功しています。英国ロイヤルバレエとの『火の鳥』は、神業と思えるまでの魔法のような魅力に満ちていました。また、ケネス・マクミランとの親交によって、マクミラン振付のジュリエットや『パゴダの王子』のローズ姫においても突出した成功を収めました。さらに、ニューヨークシティバレエに客演したバレリーナの中で、アナニアシヴィリほど容易に、また美しく、バランシンの傑作 ―― 『シンフォニー・イン・C』『ライモンダ・ヴァリエーション』『アポロ』―― の頂点を極めた踊り手は存在するでしょうか?

ニューヨークは幸運にも、アナニアシヴィリが主要レパートリーを次々と洗練させて行く過程を目撃する機会に恵まれています。1993年にABTと契約を交わして以来、マクミランの『マノン』、バランシンの『チャイコフスキー パ・ド・ドゥ』、そしてスティーブンソンの『シンデレラ』等、新たな作品に取り組み、大成功を収めています。また、1997年に上演されたロナルド・ハインド振付『メリー・ウィドウ』もまた、忘れることのできない素晴らしい舞台となりました。

このように、現時点までに既に素晴らしい功績を収めているにも拘らず、彼女の黄金時代はまだまだ続くと感じさせるところが、ニーナ・アナニアシヴィリの持つ芸術性の奇跡と言う他ありません。そして私たちは、驚嘆と、喜びと、興奮を持って、ニーナ・アナニアシヴィリのさらなる黄金時代に期待します。

BY LARRY KAPLAN(原文: 英語)